【目的】
排泄は、日常生活上不可欠な動作である。排泄動作に介助を要する場合、利用者や介助者の身体的・精神的負担が高く、退院後の生活に大きな影響を与える。そこで本研究では、退院時に排泄動作が自立あるいは監視まで改善する要因について検討した。
【方法】
対象は平成18年10月から平成19年9月までに退院した当院回復期リハビリテーション病棟(回復期病棟)の脳血管疾患利用者のうち入院時に排泄が非自立であった76名とし、下記2項目について調査した。統計にはχ2検定、Mann-WhitneyのU検定、Unpaired t検定を用い有意水準5%未満とした。
1)退院時に排泄が自立した利用者(自立群)31名と退院時に排泄が非自立であった利用者(非自立群)45名に分け、入院時の1)年齢2)下肢Brunnstrom stage(下肢Br-stage)3)排泄関連FIM(排尿管理・トイレ動作・トイレ移乗(排泄FIM)、移乗・移動)4)坐位介助量5)立位介助量を比較検討した。
2)非自立群を退院時排泄関連FIMの介助量が監視の利用者(監視群)17名と介助を要す利用者(介助群)28名に分け、入院時の1)~5)と6)日中排泄場所を比較検討した。
【結果】
1)自立群と非自立群を比較すると、自立群では1)74歳以下2)下肢Br-stage5以上3)排泄関連FIM5点以
上4)5)坐位・立位介助量が監視以上の項目で非自立群と有意差を認めた。
2)監視群と介助群を比較すると、監視群では1)年齢は有意に低く3)排泄FIMが高値5)立位介助量が監視
以上6)日中排泄場所はトイレが有意に多かった。しかし2)下肢Br-stage3)FIM移乗・移動項目4)坐位介
助量では監視群・介助群間に差がなかった。
【考察】
本研究では年齢が低く、入院時より下肢Br-stageが高く、排泄関連FIMが高値、坐位・立位介助量が少ない利用者は排泄が自立する可能性が高かった。また退院時排泄動作介助量に関しては、年齢が低く、入院時より排泄FIMが高値、立位介助量が少なく、トイレで排泄が可能な利用者は監視まで改善する可能性が高いと考えられた。しかし入院時の下肢Br-stage、FIM移乗・移動項目、坐位介助量との関連性は低かった。そのため排泄動作介助量軽減には、入院時より適切に立位動作を評価しアプローチすることが重要であると思われる。更に回復期病棟では早期から積極的にトイレでの排泄を促し、排泄動作を繰り返し練習することも有効であると考えられる。
【まとめ】
・脳血管疾患利用者の排泄動作介助量軽減因子を検討した。
・排泄自立群は、年齢が低く、入院時より下肢Br-stageが高く、排泄関連FIMが高値、坐位・立位介助量が少なかった。
・立位介助量軽減が排泄動作介助量軽減につながる可能性が高い。
・トイレで排泄を促すことは、排泄動作介助量軽減に有効である。
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