本稿は、陸軍省大日記類の接収・返還経緯と我が国における所蔵状況を検証することで、可能な限り返還状況の全容に迫ろうとするものである。
第二次世界大戦中、旧陸軍省は戦火から公文書類を守るため、文書疎開を行った。敗戦後、
連合国軍最高司令官総司令部
(GHQ)は、陸軍省地下倉庫に格納されていた大日記類の回収、復帰を指示した。それらはGHQに接収され、米国へ渡った。日本の独立後、外務省が米国における調査と米国政府に対する返還交渉を重ねた結果、陸軍史料は数度にわたって返還されるに至った。返還された大日記類は、現在、防衛省防衛研究所と国立公文書館の2館に収蔵されている。
上記経緯を踏まえ、本稿では接収された大日記類の総目録と2館の所蔵状況を比較検討し、返還総冊数と未返還総冊数を明らかにする。さらに、防衛省防衛研究所所蔵史料の欠損箇所中、どの史料が国立公文書館に所蔵されているかについて指摘したい。
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