本研究では暑熱環境下 (30℃, 60%RH) と温熱的中性環境下 (26℃, 55%RH) で, 繊維組成と編み構造の異なる4試料の夏用肌着の着用快適性について検討した. 若年男性による着用評価と衣服内環境の比較より, 夏用肌着として好まれる編地特性を探ることを目的とした. 着用実験より以下のことが明らかとなった.
(1) 着用評価と編地特性の関係
試料A (ナイロン58%, キュプラ31%, ポリウレタン11%), B (ポリエステル88%, ポリウレタン12%) は両環境ともに, 温熱評価, 肌当たり評価, 総合評価は高かった. 使用糸が細く, 編み密度が高く, Sa粗さ (表面凹凸の絶対値) が小さいためと考える. 暑熱環境下の温熱評価は, 薄く, 通気性の高いBがAより高い傾向となった. C (ポリエステル100%) の肌当たり評価は編み密度が低く, 曲げかたく, Sa粗さが大きいため有意に低くなった. D (綿100%) は全ての評価項目で両環境とも最も低く評価された. 使用糸が太く, 編み密度が低く, Sa粗さも大きい. 編地が厚く, ヒートロスが低いことが影響したと考えられる.
衣服内温度, 湿度は同環境では試料間の差は少なかった.
(2) 夏用肌着として好まれる編地特性
温熱面も肌当たりもよい編地が夏用肌着として好まれるが, とりわけ暑熱環境下では温熱評価, 中性環境下では肌当たりの良さが主要な要件となる.
回帰分析より, 夏用肌着として好まれる編地特性は使用糸が細く, 編み密度を高め, 薄くて通気性が高い, 曲げ柔らかく, ポリウレタンを混用しストレッチ性の高いことがあげられる.
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