食酢は調味料として欠かせないものであるが, 食品として使用されてきただけでなく, 医療目的にも利用されてきた。米酢のうち, 茶褐色の
黒酢
は壺を用いる伝統的な方法もしくは, 屋内の設備を用いて製造される。前者に相当する壺造り
黒酢
は陶器の壺に蒸し米, 地下水, 米麹を充てんし, 屋外で製造される。経験的に知られていた壺造り
黒酢
の健康効果は科学的にも明らかにされてきた。食酢の成分は共通の主成分である酢酸以外は原料や製法の違いにより大きく違っている。壺造り
黒酢
は, 他の食酢と比較して窒素化合物の含有量が多く, 逆に炭水化物は非常に少ない。窒素化合物の大部分はアミノ酸である。さらに壺造り
黒酢
にはアミノ酸が結合したペプチドやアミノ酸誘導体などが含有されている。酢酸以外に微量の乳酸などの有機酸も含有されており, これらの有機酸は壺造り
黒酢
特有の香味などに影響している。壺造り
黒酢
にはポリフェノール, 脂肪酸類も含まれていて, これらの微量に含まれる物質が機能性をもたらすと考えられている。壺造り
黒酢
の機能性には酢酸が有する血圧低下作用や疲労回復効果だけでなく, 抗酸化効果, 脂質・糖質代謝や循環器機能の改善, 抗腫瘍効果などの機能が報告されている。本総説ではおもに壺造り
黒酢
の生理機能を紹介する。
抄録全体を表示