1. 1954年4月から8月に2回に亘つて(36日間と45日間),地温を20~22°C,30~32°C,40~42°Cとして,8種のカンキツ類実生の夏季の生育を比較すると,ナツダイダイ,ヤマミカン,法元ブンタンなどは地温30~32°Cにおいて,ユズ,カラタチ,タチバナ,日向ナツミカンなどは地温20~22°Cにおいて生育が最もよく,コウジは地温22°Cと32°Cとで生育が殆んど同じであつた。20~22°Cにおいても,ナジダイダイ,ヤマミカン,法元ブンタンの生長量は他に較べて多い。40~42°Cでは8種ともに生育が著しく劣り,ナツダイダイ,ヤマミカン,法元ブンタンのみ僅少ながら生長した。
高知の夏季の地温は,地表下30cm以内で24~31°Cである。従つて,地温の点でナツダイダイ,ヤマミカン,法元ブンタンなどの実生が台木として適し,ユズがこれに次ぐ。カラタチは不適当で,台木として使用するならば深根になるように管理し,敷藁,覆土も必要である。
2. 1955年2月7日から3月6日まで(水耕法)と1957年12月23日から翌年4月30日まで(普通のポット栽培)と2回に分け,地下部の温度を高めて,14種のカンキツ類実生の冬季から春季に亘る生育を比較した所,加温によつて,根の伸長開始期が著しく早くなり,1日当り伸長量も多く,伸長期間が延長された。地温18~23°Cで1月中旬に,地温9~15°Cで1月下旬~2月上旬に根が伸長し始め,地温3~13°Cに較べて,前者で45~56日,後者で26~38日も早い。概して地温23°C以下では,耐寒性のあるカラタチ,ユズ,コウジの根が早く,ハツサク,ダイダイ,舟床ミカン,日向ナツミカン,タチバナなどの根が前者らに次いで早く,耐寒性の余りない福原オレンジ,ワシントン・ネーブルオレンジ,ヤマミカンなどの根はおそく伸長し始める。地温上昇に伴なう根の伸長の促進程度は耐寒性に劣るものほどやや高い。
3. 冬季における地下都の温度が8~13°Cであると,カラタチを筆頭にコウジ,ユズ,ダイダイ,舟床ミカンなどは特に生長が旺盛で,ナツダイダイ,日向ナツミカン,サンボウカンなども前者に次いで比較的生育がよい。ハツサク,ヤマミカン,法元ブンタン,タチバナ,福原オレンジ,ワシントン・ネーブルオレンジなどはいずれも生育が劣る。しかし,地下部の温度が3~13°C区に較べて,カラタチ,コウジ,ユズなどが2倍弱,ダイダイ,舟床ミカン,日向ナツミカン,サンボウカンなどが2~3倍,ナツダイダイ,ヤマミカン,タチバナなどが3倍強,オレンジ類がそれ以上で,耐寒性の余りないもめほど倍率が高い。高知の地表下50cm以上の地,温は冬季と雖も8.5°C以下に下らないが,本邦のカンキツの根は地表下30cm以上に殆んど及んでいない。従つて冬季の地温の点から,耐寒性のあるカラタチ,ユズ,コウジなどや深根性であるユズ,ナツダイダイなどが台木として適し,ダイダイ,舟床ミカンなども比較的よい台木といえる。なおカンキツ類の台木の根が深くなるように努め,地温保持の管理方法が一層望まれる。
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