日本食品科学工学会誌
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大豆煮汁からのニコチアナミンの単離と加熱処理による変動
竹中 哲夫村山 崇志竹中 陽子
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2009 年 56 巻 1 号 p. 6-13

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抄録

味噌,醤油および納豆の製造時に排出する大豆煮汁を機能性食品素材として利用することを目的として,大豆煮汁中のアンジオテンシンI変換酵素(ACE)阻害物質を分離し,原料大豆から大豆煮汁に至る大豆蒸煮工程におけるACE阻害活性とACE阻害物質の変化について調べた.大豆煮汁からイオン交換クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーを用いてニンヒドリン反応を示すACE阻害物質を分離した.ACE阻害物質は赤外吸収スペクトル,核磁気共鳴スペクトル,マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計解析より,ニコチアナミンであると同定した.大豆煮汁(乾物)100gより精製ニコチアナミン37mgを得た.
大豆の浸漬・蒸煮工程における各生大豆,浸漬大豆,蒸煮大豆と蒸煮大豆より溶出する大豆煮汁のACE阻害活性とニコチアナミン含量の変化を調べたところ,生大豆と浸漬大豆ではほぼ同程度のACE阻害活性を示した.さらに蒸煮大豆ではACE阻害活性が生大豆の30%,大豆煮汁では10%に低下し,ニコチアナミン含量も同様の挙動を示した.
大豆煮汁には脂質や大豆由来の水溶性タンパク質等の夾雑物質が少ないために,大豆煮汁からのニコチアナミンの分離を容易にしている.よって大豆煮汁はニコチアナミンの供給源として適する材料である.

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© 2009 日本食品科学工学会
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