日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成21年度日本調理科学会大会
セッションID: 1P-16
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エイの魚食文化と地域性
*冨岡 典子太田 暁子志垣 瞳福本 タミ子藤田 賞子水谷 令子
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抄録

【目的】 日本におけるエイ利用の地域性および食習慣が形成された背景について解明を試みるとともに,エイ利用の事例から日本の魚食文化の特徴を明らかにしたいと考える。
【方法】 「平成15・16年度日本調理科学会特別研究調理文化の地域性と調理科学-魚介類の調理-」の報告書およびDBを資料に,北海道から沖縄までのエイの調理文化(調理法,日常食・晴れ食の利用など)について検討するとともに,エイの食習慣が形成された背景および地域性を明確にするための資料として『日本の食生活全集』 (全48巻)を参考にした。
【結果】 エイが食用として記載されるのは室町期の『四条流包丁書』が初見であり、「さしみ」の調理法とともに,その薬効が紹介されていた。江戸期になり、汁,なます,田楽など種々の料理が記されると,「庄屋文書」「宮座記録」にもエイの料理が供されている。今日,各地の晴れ食に伝わるエイの食習慣は,この時代に発達し、定着したと考える。エイの伝統的な食習慣は,東北,近畿,中国の内陸部や山間部の正月,盆,祭りに欠くことのできない食べ物として現代においても伝承され、その調理法には煮もの・煮付けが多く、東北ではエイの乾物が、近畿・中国ではアカエイの鮮魚が用いられていた。エイの魚肉は尿素含量が高く,魚類としては腐敗しにくい特性を持ち,日持ちのする無塩物(鮮魚)として調理できることや乾物にすれば保存できることなど、海から遠い地域でも利用できる海魚であった。エイは,肉,ひれ,骨のすべてが食用になり,軟骨特有の歯ごたえと煮ものによって形成されるゼラチン質の煮こごりの食感は,日本人の嗜好に合い,本草書に記されたエイの食品価値は,民間に伝わったアカエイの肝の薬効とともに高く評価され、晴れ食の食べ物になったと考える。
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© 2009日本調理科学会
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