2017 年 25 巻 p. 99-103
Europium sulfide(EuS)ナノ結晶は価電子帯と伝導帯の間に縮退した4f電子軌道を持つ磁性半導体の一つである.この4f軌道から5d軌道への電子遷移は,外部からの磁場作用により巨大な磁気光学旋光(e.g.ファラデー効果)を示し,近年ではその特異効果を用いたセキュリティ物質や可視光アイソレータ応用への注目が集まっている.磁気光学効果はファラデー物質の磁性と入射光による物質の光学電子遷移よって発現するため,機能中心となる磁性イオンの環境(ex.結晶場)や電子物性に強く依存した効果発現が期待される.本研究では中核物質に大きな磁気光学効果を示すEuSを選択しそれと全率固溶系を成すCalcium sulfide(CaS)結晶を用いた新しい機能化の検討を行う.機能中心で大きな吸光係数を持つEu2+は結晶環境の変化に敏感な5d電子軌道を持ち大きな磁気光学効果を発現する磁性イオンとして知られている.そのEu2+を機能中心にしたEuS-CaSの連続固溶体ナノ結晶の創成は結晶場分裂と量子サイズ効果を掛け合わせた光学材料設計が可能となる.ここでは巨大な磁気光学旋光と高輝度発光を組み合せた新型セキュリティ物質の検討を行った.