2018 年 26 巻 p. 135-139
計算科学を工学的な問題に用いる際の大きな阻害要因の一つに,問題に即した粒子間力モデルや境界条件にソフトウェアが対応していないことがある.従来のシミュレーションによる研究の多くは,実験結果の再現ができているかどうか,モデルそのものの物理化学が正しいかどうかの検討,あるいは純粋に科学的・学術的な興味からのアプローチが主であり,材料設計やプロセス設計のためのツールとして使える段階に至っていないことが多い.本研究では,コロイドシミュレーターKAPSELの実用性と機能の強化によって現実的な問題への応用を目指した.具体的には,1)粒子径より電気二重層が薄い場合に荷電粒子分散系を効率よくシミュレーションする粒子間力モデルであるDLVOモデルの実装,2)大規模シミュレーションを実現するためのシミュレータの並列化,3)外部電場により荷電コロイド粒子間に誘起される異方的相互作用の計算に取組んだ.