離散要素法(DEM)では,オリジナル粒子より剛性を低減させたモデル粒子を使用することで時間刻みを大きくとり,シミュレーションにかかる計算コストを下げることが一般的である.また,付着性粒子のシミュレーションにおいては,接触時間の増加に伴う過剰なエネルギー消散を防ぐため,粒子剛性の低減に合わせて付着力をスケーリングする手法が近年提案されている.この手法は粉体がバルク体として流動化している動的な系に対しては非常に有効であるが,接触中における瞬時の力の釣り合いが崩れることから,凝集や付着といった相対的静止状態を模擬することが難しい.本研究では,剛性を低減したモデル粒子に対して,付着力の代わりに粘性減衰係数をスケーリングする手法を提案した.また,提案手法を回転ドラムのシミュレーションへと適用し,壁面への粒子の付着といった静的な状態と動的安息角といった粉体バルク挙動を同時に模擬可能であることを確認した.