2015 年 35 巻 3 号 p. 339-343
症例は53歳,女性。ジョギング中に突然左下腹部痛と吐き気を発症し,当院救急外来を受診した。身体所見では,下腹部に圧痛を認めた。腹部造影CT検査で,左子宮円索の尾側に陥入するS状結腸ループを認め,子宮広間膜裂孔ヘルニアと診断した。直腸診を行うと,直腸の左側に外側から圧排する半球状の腫瘤病変を触知し,同部位に圧痛を認めた。直腸診の後に腹痛は軽快し排便を認め,嵌頓が解除されたと考えられた。そこで待機的に腹腔鏡下手術を施行した。腹腔鏡を挿入すると子宮広間膜の左に径2.5cm大,右に径5cm大の異常裂孔を認めた。またS状結腸の腸間膜に索状の発赤を認め,嵌頓腸管と考えられた。裂孔を縫合閉鎖して手術を終了した。術後経過は良好で術後第3病日に退院となった。子宮広間膜ヘルニアの報告例は散見されるが,嵌頓腸管はほとんどが小腸であり,緊急手術での対応となる。本症例につき若干の文献的考察を加えて報告する。