2023 年 26 巻 p. 43-53
企業は,拠点がある地域社会との関係つくりが欠かせない。特に,大型の商業施設を構える立地型小売業は,地域の生活者,自治体や消防・警察などの公的セクター,商品ベンダー・テナントなどの商業セクターと直接のコンタクトがあり,地域社会の課題とその解決に対して,重点的に取り組めるメカニズムを有している。本稿は,ポル・ポト政権により国家の基本インフラが破壊されたカンボジアにおいて息の長いCSR活動を行い社会制度作りに貢献したイオンが,事業活動においても新しい制度作りに寄与した事例を検証する。イオンが創業以来,地域社会との関係を深めることで培ってきた経営資源,および立地型小売業としての事業メカニズムが,本事例の背景にあることを明らかにしていく。