抄録
貯蔵したホウレンソウ (Spinacia oleracea L.) のペルオキシダーゼによるクロロフィル (Chl) 分解に及ぼす還元型アスコルビン酸 (AsA) およびβ-カロテンの影響について検討した。ホウレンソウの貯蔵は25℃下, 加湿した10ppmエチレンおよび空気を通気することによって行い, 貯蔵中のChl, AsAおよびβ-カロテン含量を測定した。また標品のペルオキシダーゼを使用し, ペルオキシダーゼー過酸化水素系によるChl分解に及ぼすAsAとβ-カロテンの影響についても調べた。
AsAとβ-カロテンがペルオキシダーゼー過酸化水素反応系に添加されるとCh1分解は抑制され, これら抗酸化剤はペルオキシダーゼー過酸化水素系によるChl分解を効果的に抑制することが示された。ホウレンソウの貯蔵に伴うAsA含量はChl含量の低下に伴い減少し, その減少程度はβ-カロテン含量の減少に比べ顕著であった。エチレン処理はAsAおよびChlの減少を促進し, AsAの減少はChlの低下に先行して生じた。
以上の結果から, AsAおよびβ-カロテンはChl分解に関与するペルオキシダーゼー過酸化水素系に対して抑制作用を持ち, ホウレンソウの貯蔵に伴うChl分解については, 特にAsAの一定レベル以下の減少が分懈要因になっているものと推察した