総合健診
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原著
当院人間ドックにおける偽A群を抑制するための検討
木村 典夫
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ジャーナル オープンアクセス

2016 年 43 巻 5 号 p. 553-559

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抄録
 従来より行われているバリウムを使った胃がん検診の受診率はなかなか増加しない。本年度より内視鏡による胃がん検診が推奨されたが地域によっては内視鏡医のマンパワーの問題もある。そこで画像検診を行うかを層別化するための胃がんリスク検診であるABC検診が普及してきている。しかし、本来胃がんリスクのないA群から胃がんが発症することがあり問題視されている。その原因は、Helicobacter pylori(以下H. Pylori)検査が偽陰性かH. Pylori既感染が含まれるためである。血清H. Pylori抗体検査はH. Pylori感染を診断するために開発されたため、H. Pylori既感染を診断するための判定基準はない。真のA群を診断するためには、H. Pyloriの未感染と既感染・現感染を分ける必要がある。A群の中の偽陰性・既感染を偽A群と呼ばれ、胃がんリスクを有するため除外する必要がある。そこで今回2014年当院人間ドック受診者で胃内視鏡検査に血清H. Pylori抗体とペプシノゲン検査を施行した1,081例について検討した。そのうち311例が除菌後で、残る770例をABCD群に分けた。A群は632例82.1%で偽A群を除外するために井上らの報告によりH. Pylori抗体のカットオフ値を3U/mL以上、ペプシノゲンⅠ 30ng/mL以下、ペプシノゲンⅡ 12ng/mL以上、Ⅰ/Ⅱ比4.5以下を異常とした。それ以外を正常とし、いずれも正常とした場合を真のA群とした。その結果A群は、480例62.3%に減少しその中の内視鏡的既感染は7例で偽A群を1.1%にまで少なくさせることができた。7例のうち2例は十二指腸潰瘍瘢痕を認め萎縮がほとんどなく胃がんリスクがないと思われ、残る5例にC2以上の萎縮を認めた。他2例もカットオフ境界であり、最終的には0.8%にまで偽A群を少なくさせることが可能であった。
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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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