総合健診
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原著
企業・健康保険組合は子宮頸がん検診において細胞診自己採取法を採用すべきではない
長谷川 暢子森口 次郎大橋 史子
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2016 年 43 巻 5 号 p. 560-566

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抄録

【背景】日本における子宮頸がん検診受診率は約3割と非常に低い。そこで、独自の健診項目が設定可能である企業や健康保険組合(健保)は、エビデンスの確立された細胞診医師採取法ではなく、受診率向上を目的として簡便な細胞診自己採取法を広く採用している現状がある。
【目的】本研究は、対策型検診の位置づけにある職域検診や家族検診において、細胞診自己採取法の有用性の有無を検討した。
【対象】2013年4月1日から2015年3月31日までの2年間に、京都工場保健会(当会)子宮頸がん検診を受診した医師採取61,489例と自己採取5,927例を対象とした。
【方法】医師採取法と自己採取法をそれぞれ職域検診と家族検診の2群に分類し、各年代における細胞診陽性率についてFisher’s exact testを用いて比較検討した。
【結果】細胞診陽性率について、職域検診群、家族検診群ともに医師採取法において細胞診陽性率が高く、有意差(p<0.01)を認めた。また、自己採取法においては1例も腺細胞系病変が検出されなかった。
【考察】職域検診や家族検診において、明らかに自己採取法の精度が劣り、医師採取法の代替法とはなり得ないことが本研究で証明された。特に、自己採取法は子宮頸がんの好発年齢である20~40歳代において偽陰性が多い傾向にあり、これは対策型検診の目的である死亡率減少効果が不十分であることに加え、妊孕性が奪われるなどQOLの低下を招く危険性がある。また、自己採取法は近年増加傾向にある子宮頸部腺癌の検出には不向きである可能性も示唆された。原則医師採取による実施が望ましいが、近年、自己採取HPV検査は医師採取法と同様に有効であるという報告もあり、医師採取法の代替法として期待される。
【結語】企業・健保は子宮頸がん検診において細胞診自己採取法を採用すべきではない。

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© 2016 一般社団法人 日本総合健診医学会
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