抄録
特別支援教育において,タブレットパソコンなどを用いた教育実践が行われてきている.特別な教育ニーズをもつ児童生徒の教育においてICT機器を活用することは,アプリ開発の盛況さとあいまって加速化している.障害児者とその家族にとって,ICTのハードとソフトが手に届きやすくなることは,発達障害児者の学習や余暇の選択肢が増えるという点でよろこばしいことであるが,一方でエビデンスが不十分なままに十把一絡げにICTを使用することは学習によいと喧伝される傾向には少々危惧を抱いている.そこで本論では,特別支援の必要な対象児・者に対して,ICTを利用することのメリットとデメリットを考えてみる.最新のICT機器やすぐに使えるアプリ・ソフトウェアなどの紹介ではなく,もっとその根本であるはずのこと,つまり前提としてその対象児に対してICTを使うことの妥当性は確かか,使うことの効果の評価はどう考えるべきなのかということについて,いくつか事例を挙げながら述べる.