日本森林学会誌
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論文
Phytophthora cinnamomiによるウルシ林の衰退―国産漆の新たなる脅威―
升屋 勇人 田端 雅進市原 優景山 幸二
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2019 年 101 巻 6 号 p. 318-321

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抄録

国産漆の需要拡大とともに国産漆増産の機運が高まる中,これまでに多くのウルシの植林が全国で行われてきたにも関わらず,漆液の収穫にこぎつけている地域は多くない。そこにはウルシの育成時における何等かの阻害要因が存在すると考えられた。実際に全国で植林したウルシの衰退傾向が著しい地域において調査を行った結果,北海道や岩手県を除く衰退林のほとんど全てで土壌より植物疫病菌の1種Phytophthora cinnamomiが検出された。分根苗を用いた土壌混和による接種試験では,菌を入れていない土壌と比較して明らかな衰退枯死が見られた。本研究により,P. cinnamomiは日本のウルシ植林において阻害因子の一つとなり得ると考えられた。また,本病害を新病害「ウルシ疫病」とすることを提案した。

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© 2019 一般社団法人 日本森林学会
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