2021 年 103 巻 4 号 p. 285-290
過密なスギ老齢人工林1林分における林齢134~175年の林分成長経過を,斜面区と平坦区別に調べた。斜面区では,本数率10%前後の極めて弱い伐採が数回実施されたため,過密状態を解消できず,枯死木が発生し続けた。しかし,継続的に伐採されたことで,込み合い度は緩やかに改善し,胸高直径成長量が増加することで,平均形状比は70未満まで低下し,林分材積純成長量は10 m3/ha/年以上に達した。平坦区では,林齢146年に本数率22%の下層間伐が実施されたことで,過密状態が解消され,枯死木発生が止まった。そして,胸高直径成長量が増加することで,平均形状比は70未満まで低下し,林分材積純成長量は20 m3/ha/年前後まで増加した。地位級1等で樹高成長が継続しているため,相対幹距15%を超える下層間伐を施せば,林分材積純成長量が20年近く,20 m3/ha/年前後になることが確認された。