抄録
α-トコトリエノール (α-Toc 3) とその誘導体の抗酸化性について, 2, 2'-アゾビス (2-アミジノプロパン) 二塩酸塩でジリノレオイルホスファチジルコリン (DLPC) のリポソームを酸化させる系で検討した。抗酸化剤又は酸化開始剤のDLPCに対するモル濃度を一定水準に保ったままで全液量に対するDLPCのモル濃度を変えた2種類の条件を用いた。すなわち, DLPC濃度は条件-Iでは1.93×10-3Mであり, 条件-IIではおよそ0.3×10-3Mである。動力学的な検討の結果, いずれの条件でもDLPC2分子膜中ではα-Toc 3はα-トコフェロール (α-Toc) と同様の抗酸化性を示した。しかし, リボソーム形成後に添加すると, α-Toc 3はα-Tocより高い抗酸化性を示した。合成したα-Toc 3の水溶性誘導体を条件-IIでリボソーム形成後に添加すると, 水溶性のカルボキシ-2, 5, 7, 8-テトラメチル-6-クロマノールと同様, 条件-IIでDLPC2分子膜中にあるα-Toc 3とほぼ同じ抗酸化性を示した。条件-IIで, 水溶性抗酸化剤の水溶解度はそれらの抗酸化性に影響した。これらの結果は, インビトロでのα-Toc3のα-Tocより高い抗酸化性が合成リボソーム系でも認められること, またその高い抗酸化性を説明するのにα-Toc 3のDLPC 2分子膜中または膜近傍での分布状態を考慮すべきことを示している。