日本油化学会誌
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3-ホルミルプロピオン酸メチルを用いた (E) -9-オキソ-2-デセン酸 (ミツバチ女王物質) の合成
司 英隆
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1997 年 46 巻 5 号 p. 589-593,600

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抄録
女王物質 [(E) -9-オキソ-2-デセン酸 (1)] は, ミツバチの女王ばち (Apis mellifera) から分泌されるフェロモンである。このフェロモンは, 働きばちの卵巣の生育を抑制し, 巣の中では女王ばちを成長させる働きをもっている。この化合物が生化学的に重要であることから, いくつかの合成法が知られているが, 3-ホルミルプロピオン酸メチル (2) を原料とする方法は報告されていない。
化合物 (2) と2-メチル-2-ビニル-1, 3-ジオキソランからラジカル付加反応により収率76%で生成するケトエステル (4) を, 水酸化カリウムの存在下, ジエチレングリコール中でヒドラジンモノヒドラートと処理し, 収率68%でエチレンジオキシカルボン酸 (5) を得た。 (5) をベンゼン中, ナトリウム水素化ビス (2-メトキシ) アルミニウムと煮沸することにより還元し, 収率75%でアセタールアルコール (6) とした後, さらに, クロロクロム酸ピリジニウムで酸化して収率76%でアセタールアルデヒド (7) を得た。このアセタールアルデヒド (7) をマロン酸と縮合して収率71%で (8) を得, (8) を1M塩酸で加水分解して収率92%で (1) を合成した。
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