日本油化学会誌
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トコフェロール (ビタミンE) およびカテキン類の変異原捕捉活牲に関するMO解析
岡島 俊哉秋山 知子河口 忍
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2000 年 49 巻 11-12 号 p. 1423-1431,1448

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抄録

トコフェロールおよびカテキン類と親電子性変異原の反応サイトであるオキシラン環との芳香族求電子置換反応の反応性を分子軌道法により調べた。反応物および遷移状態の構造はPM3レベルを用いて求め, 反応の活性化エネルギー (ΔE) は密度汎関数法 (Becke3LYP/3-21Gレベル) を用いて評価した。親電子性変異原の反応サイトであるオキシラン環のモデルとしてエチレンオキシドを選び, トコフェロールおよびカテキン類のモデル化合物との反応性について検討した。トコフェロールは親電子性物質と反応し得るサイトを持つβ, γおよびδ-トコフェロールの三つについてモデル化した。
三種類のトコフェロールのフェノキシドとエチレンオキシドとの求電子置換反応の律速度段階のΔE値は43-53kJ/molと計算され, 予測される反応性はβ~γ<δの順となった。C-7位でエチレンオキシドと反応するδ型の反応のTSが最も安定でありΔE値が最も低く (+43.3kJ/mol), また, カテキンの反応においてはO-5フェノキシドがC-8位で反応するTSのΔE値 (+40.5kJ/mol) が最も近くなった。これらのΔE値は体温において反応し得るほど十分小さく, 親電子性変異原がトコフェロールあるいはカテキンにより直接捕捉される可能性が示唆された。

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