2008 年 17 巻 7 号 p. 681-684
腹部大動脈瘤の手術では対麻痺の合併は比較的まれである.今回,破裂性腹部大動脈瘤術後に対麻痺をきたした 1 例を報告する.症例は60歳男性で,右下腹部痛・腰背部痛を主訴に来院した.腹部CT検査にて腎動脈下腹部大動脈瘤と後腹膜の血腫を認め,破裂性腹部大動脈瘤と診断した.手術準備中に血圧40mmHgのショックとなり,直ちに瘤切除術,straight graft置換術,下腸間膜動脈再建を行った.術後Th11以下の不全対麻痺を合併した.ナロキソン投与,ステロイドパルス療法,早期リハビリにて自力歩行まで改善した.本症例では術前・術中の低血圧がその発症に深く関与していると考えられた.