2018 年 61 巻 p. 21-27
粒子分散液を塗布・乾燥して薄膜を得る場合, 乾燥後の内部構造が膜性能に大きな影響を及ぼすことが少なくない。従って, 塗布直後から溶媒が完全に蒸発するまでの乾燥過程において, 粒子分散液がどのように濃縮され, それに伴って粒子がどのように充填されるのかを知ることは, 膜構造制御において欠かせない。多くの粒子分散液は内部で粒子が凝集構造を形成するが, これが塗布時にどのように変化するのかを理解するにはレオロジー評価が有用である。また, 乾燥中の塗布膜厚さと重量の変化を比較することで, 分散液の濃縮と粒子層の充填・圧密化を分けて理解することができる。加えて, 塗布膜表面でのレーザー光の散乱挙動は局所的な粒子凝集状態の変化を反映している。本稿では, これらの指標を組み合わせて, 塗布時に印加されたせん断ひずみに応じて内部構造が破壊もしくは保持された粒子分散液塗布膜の乾燥過程について解説する。