2019 年 62 巻 p. 22-29
サイアロン蛍光体はSi-Al-O-Nなどの身近な元素を主成分とする粉末発光材料である。21世紀になって発見された新材料であるが,すでに家庭にも普及した白色LED照明やRGBの3原色を鮮やかに表示できる液晶ディスプレイ用として広く使われている。本稿では,まず,これまでに実用化され蛍光体メーカにより量産されている蛍光体を紹介し,特に学術的にも興味深い性質を持つβサイアロン緑色蛍光体について詳述する。次に今後期待される超高演色照明やSuper Hi-Vision (8K) TV用にも応用可能な各種サイアロン蛍光体の例を挙げ,その中から青色JEM蛍光体を例にしてスペクトル制御の原理についても説明する。最後に蛍光体の特性評価や工業的取扱いにおいて重要となる標準物質としてのサイアロン蛍光体の役割についても言及する。