プラスチック類の劣化状態を測定する一般的な手段として,①赤外分光分析による酸化や分解構造の解析,②電子顕微鏡による構造変化の観察,③組成分析による添加剤の濃度や分解物の解析,④硬さや引張強度の物性測定等が挙げられる.しかし,これらの分析で得られる情報は,一部を除きスペクトルや画像による定性的・相対的なものが多く,劣化度を定量的に表すには至っていない.我々はセラミックスやプラスチック材料の遠赤外線効果の評価に用いられる赤外放射率に着目した.劣化による構造変化と赤外放射率の関連性について検討し,劣化度合いを赤外放射率として数値化することを試みた.試料としてポリ塩化ビニルおよびカーボンブラック配合スチレン/ブタジエン共重合体(黒ゴム)を用いて屋外暴露試験や劣化促進試験を実施し,劣化試験片の赤外放射率を求めた.その結果,両試料とも経時的に赤外放射率が低下する傾向を示し,赤外放射率と劣化の間に関連性があることが判明した.これにより劣化度合いを赤外放射率で評価することが可能となった.