農研機構研究報告
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原著論文
カドミウム吸収性が極めて低い水稲新品種「ふくひびき環1号」・「えみのあき環1号」の育成
津田 直人 太田 久稔横上 晴郁藤村 健太郎石川 覚安部 匡福嶌 陽梶 亮太黒木 慎
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2024 年 2024 巻 17 号 p. 39-52

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抄録

「ふくひびき環 1 号」,「えみのあき環 1 号」は,「コシヒカリ環1号」由来のカドミウム(Cd)低吸収性を東北農業研究センターが育成した水稲品種である「ふくひびき」,「えみのあき」に導入するため,「lcd-kmt2」(後の「コシヒカリ環 1 号」)と「ふくひびき」もしくは「えみのあき」を戻し交配し,東北農業研究センターで選抜,育成した同質遺伝子系統である.それぞれ「奥羽 IL1 号」,「奥羽 IL3 号」の地方名で栽培特性・品質特性を検討し,Cd 低吸収性と原品種との同質性が確認されたため,2021 年に品種登録出願を行った.育成地(秋田県大仙市)での標肥移植栽培における特徴は,出穂期,成熟期,稈長,穂長,穂数,収量性,食味,耐病性等の主な農業特性は,いずれも原品種である「ふくひびき」,「えみのあき」と同程度であった.また,現地栽培試験や Cd 汚染土壌を用いたポット試験の結果から,Cd 吸収性は「コシヒカリ環 1 号」と同程度に極めて低かった.「ふくひびき環 1 号」,「えみのあき環 1 号」は,「コシヒカリ環 1 号」では熟期や耐病性等が問題となる東北地域中部以南の Cd 吸収抑制対策が必要な地域において普及が期待される.

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© 2024 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
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