スマート農業を推進するさまざまな取組が進められる中で,データ活用の重要性が高まっている.高度なデータ活用のために,生産者個人の生産データ,経営データ,電子申請データなど機密性の高いデータを取り扱う場面が増えている.それらのデータを集約・連携するためのデータ連携基盤やAPI(Application Programming Interface)基盤において,データの保護は重要な課題の1つとなっている.しかし,これまで農業ICT分野においては,データにアクセスする利用者を正しく識別し,アクセスの許可および拒否を行うためのID管理や認証・認可システムについて議論されることは少なかった.そこで,筆者らは,農業ICT活用のための共通基盤を用いたID管理および認証・認可手法の検討を行い,ID管理に関する利便性の向上に寄与することと,認証機能と認可機能の一体的な実装が可能であることを確認した.本稿では,ID管理および認証・認可システムの現状と課題および他分野の事例を概説し,共通基盤を用いたID管理および認証・認可手法の検証の概要と結果について説明し,今後の展望と課題について述べる.