日本食品科学工学会誌
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ジアシルグリセロールを油相とする卵黄の乳化性
河上 智子大橋 きょう子島田 淳子
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2006 年 53 巻 6 号 p. 354-360

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抄録
DAGを油相とした場合の卵黄の乳化性について,卵黄濃度,pH, 塩化ナトリウム添加の影響を調べた.界面張力,エマルションの平均粒子径,エマルションの流動特性,および乳化容量について測定を行い,それぞれの結果についてTAGと比較し,以下の結論を得た.
1)TAG-pH 6卵黄分散液間の界面張力は,卵黄0.1%で低下するが,DAGのそれは,1%で低下し,全ての卵黄濃度においてTAGより高い界面張力を示した.
2)DAG の界面張力に及ぼすpHの影響は,TAGのそれに対するよりも小さい傾向にあった.
3)エマルションの平均粒子径にはpHによる差が見られなかったが,pH 6で調製したDAGエマルションは他のpHおよびTAGで調製したエマルションとは異なる流動特性を示した.すなわち,高いずり応力を持ち,構造破壊が起こりやすく,回復に時間のかかる性質を示した.
4)乳化容量についてもpH 6において最も高かったが,DAGはTAGの約1/2であった.
5)塩化ナトリウム0.5Mの添加によってDAGの界面張力はやや低下した.
6)塩化ナトリウム0.5Mの添加によって乳化容量は増加し,特にDAGでは無添加の約2倍となった.
DAGは,TAGの1/2程度の界面張力を有し,乳化剤なしでW/Oエマルションを形成する7).この性質は,DAGを油相とするO/Wエマルション形成には不利に働くと考えられる.本研究における結果は,DAGを用いたO/W乳化における界面特性および乳化性における基礎データを示したものであり,DAGは乳化安定化するのにはかなりの工夫が必要であることが明らかになった.
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© 2006 日本食品科学工学会

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