極大粒黒大豆「丹波黒」種子の無機元素組成による産地判別の可能性について検討した.
日本産丹波黒18点,丹波黒として流通している中国産黒大豆10点でICP-AES分析を行い,Al, Mn, Fe, Ni, Cu, Zn, Sr, Baの8元素を測定した結果,Al, Fe, Cu, Srの4元素で日本産と中国産の濃度に有意差が認められ,産地による無機元素組成の相違がみられた.得られた結果をもとに主成分分析を行ったところ,日本産と中国産は2群に大別され,産地の差が無機元素組成に影響を及ぼしていることが示唆された.
これら28点の結果から2群線形判別関数を求め,別の試料20点でその予測的中率を評価した.全8元素では予測的中率100%,4元素(Al, Mn, Sr, Ba)では95%と,高い精度で日本産と中国産の判別が可能であることが明らかになった.また判別分析のステップワイズ法で選択されたAl, Feの2元素だけでも予測的中率90%と比較的高い精度で判別できた.このAl, Feの2元素での2群線形判別では中国産が日本産と誤判別された例がなかったため,多元素同時定量装置がない場合などにスクリーニング法として応用可能であることが示唆された.他品種黒大豆への適用の予備的検討では,全8元素,4元素での線形判別分析は予測的中率100%であったのに比べ,Al, Feの2元素線形判別分析は予測的中率が50%と低かったため,他品種黒大豆へ適用する場合は4元素以上の測定が必要であると考えられた.
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