日本食品科学工学会誌
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わかめの加工による微量元素組成変動と産地判別の可能性
絵面 智宏國分 敦子阿部 洋俊濱田 真子加藤 栄一鈴木 彌生子
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2015 年 62 巻 10 号 p. 484-491

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抄録

加工によるわかめの微量元素組成の変動を確認するため,湯通し塩蔵処理,再塩蔵処理,水洗浄処理をおこなったわかめの12元素(Mg, P, Ca, V, Mn, Fe, Zn, As, Rb, Sr, Cd, Ba)の含量を測定した.湯通し塩蔵処理ではFe濃度が上昇し,その他の元素は減少した.再塩蔵処理では加工に使用した塩の元素組成がわかめに反映されることが確認できたが,その影響は小さかった.水洗浄処理では,わかめに対して元素濃度が低い加工塩が洗い流された影響でZn,Cd,Ba,As,Srの濃度が著しく上昇した.水洗浄わかめの微量元素組成は,原藻わかめから大きく変動しており,微量元素組成の変動の原因が加工塩の混合のみではないことが示された.
加工塩の影響を除くため,固形分の補正をおこなった場合でもわかめは加工により微量元素組成が変動していた.ただし,変動の大きさは元素により異なり,Baはいずれの加工においても変動率が20%以下であった.加工による変動の小さいBaを用いて原藻わかめ,湯通し塩蔵わかめ,水洗浄わかめに共通で使用可能な判別関数を構築し,有効性を確認したところ,正答率は中国産で90.0% (88検体中),その他産で95.9% (295検体中)であり,加工度の異なるわかめに対して有効な判別式の可能性が見出された.

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© 2015 日本食品科学工学会
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