採捕したトドを有効利用するために,化学的成分特性および力学物性を調べた.その結果,筋肉の水分はクロマグロ,ミンククジラ,豚肉とほぼ同程度であった.一方,脂身の脂質はクロマグロのトロ,ミンククジラのうねすより高く,豚脂身に近い値であった.主な全脂質脂肪酸組成は筋肉,脂身とも16:0,18:0,18:1,22:6で,クロマグロ,ミンククジラに類似していた.筋肉の主な遊離アミノ酸(ジペプチド含む)はアンセリン,カルノシン,グルタミン,アラニンで,全脂質脂肪酸と異なり,家畜である豚肉に類似していた.また,剪断力価は豚ロースと同程度であった.以上から,トド肉はn-3系脂肪酸や機能性ペプチドなどを含む食品として,有効利用が期待された.