2021 年 68 巻 6 号 p. 235-241
豆腐や豆乳等の大豆加工品の原料となる食用大豆は,国内需要量の大部分を輸入大豆に依存しており,原料単価の違いから,一般的に国産原料を使用した商品の方が外国産原料を使用した商品よりも高い価格で取引されている.このため,原料原産地表示が適正であるか否かを確認するために産地判別法の確立が求められている.本研究は,国産ダイズと外国産ダイズを判別することを目的に,ダイズの無限/有限伸育を決める遺伝子であるDt1(GmTfl1)の第1イントロンに存在する挿入・欠失に着目し,国産ダイズと外国産ダイズを判別する手法の検討を行った.第1イントロンに欠失がない遺伝子型をa型,欠失がある遺伝子型をb型とし,それぞれ135 bp,162 bpにバンドが検出されるようにプライマーを設計し,国産ダイズおよび外国産ダイズの遺伝子型の確認を行った.その結果,国産82品種中,81品種はb型であったのに対し,米国産33試料中32試料,カナダ産24試料中24試料はa型であった.以上のことから,当該プライマーを活用した検査法により,ダイズ品種の国産・外国産の推定が可能であることが示唆された.また,国産ダイズと外国産ダイズから抽出したDNA溶液を混合した試料の場合,外国産ダイズ由来のDNAが濃度比で2.5 %以上混入された場合に外国産ダイズの混入を検出することができた.このことから,国産大豆と外国産大豆が混合された場合においても,外国産ダイズの混入を検出可能であることが示唆された.当該判別法については,加工食品への導入検討を行うことにより,大豆加工品の原料原産地のスクリーニング検査法の確立が期待できる.