重合リン酸塩を使用しないエマルジョン型ソーセージにおいて,液体油脂添加が弾力に与える影響を調べた.液体油脂としては,中鎖脂肪酸油脂(カプリル酸約99 %含),サフラワー油(オレイン酸約76 %含),サフラワー油(リノール酸約71 %含)を用い,精製ラードに各液体油脂をそれぞれ10~70 wt%加えた混合油脂を作製した.混合油脂の粘度を測定した結果,いずれの混合油脂も粘度が低下した.それぞれの混合油脂を添加したソーセージのクッキングロスは,重合リン酸塩の有無および液体油脂の種類にかかわらず,有意差は無かった.また,ソーセージの硬さと弾力をテクスチャアナライザで測定した結果,硬さについては混合油脂の添加効果は無かったが,弾力性については液体油脂配合量が増えるほど向上した.さらにいずれの液体油脂についても,混合油脂粘度と弾力性には高い相関性が認められた.ソーセージのタンパク質をFITCで染色して蛍光顕微鏡で観察した結果,混合油脂配合ソーセージは重合リン酸塩使用品よりもタンパク質構造が緻密であった.
豆腐や豆乳等の大豆加工品の原料となる食用大豆は,国内需要量の大部分を輸入大豆に依存しており,原料単価の違いから,一般的に国産原料を使用した商品の方が外国産原料を使用した商品よりも高い価格で取引されている.このため,原料原産地表示が適正であるか否かを確認するために産地判別法の確立が求められている.本研究は,国産ダイズと外国産ダイズを判別することを目的に,ダイズの無限/有限伸育を決める遺伝子であるDt1(GmTfl1)の第1イントロンに存在する挿入・欠失に着目し,国産ダイズと外国産ダイズを判別する手法の検討を行った.第1イントロンに欠失がない遺伝子型をa型,欠失がある遺伝子型をb型とし,それぞれ135 bp,162 bpにバンドが検出されるようにプライマーを設計し,国産ダイズおよび外国産ダイズの遺伝子型の確認を行った.その結果,国産82品種中,81品種はb型であったのに対し,米国産33試料中32試料,カナダ産24試料中24試料はa型であった.以上のことから,当該プライマーを活用した検査法により,ダイズ品種の国産・外国産の推定が可能であることが示唆された.また,国産ダイズと外国産ダイズから抽出したDNA溶液を混合した試料の場合,外国産ダイズ由来のDNAが濃度比で2.5 %以上混入された場合に外国産ダイズの混入を検出することができた.このことから,国産大豆と外国産大豆が混合された場合においても,外国産ダイズの混入を検出可能であることが示唆された.当該判別法については,加工食品への導入検討を行うことにより,大豆加工品の原料原産地のスクリーニング検査法の確立が期待できる.
醤油の塩味増強効果を利用した減塩パンの開発を最終目標に検討を行った.官能評価における塩味を指標とした予備試験により,うすくち醤油を6 %添加することによりパン生地への食塩量を通常の食塩添加量2 %から1.4 %(醤油由来食塩0.75 %, 食塩0.65 %)に低減(30 %減)できることが明らかになった.次に,製パンへの影響を検証するため,通常食塩添加濃度(2 %)の対照(C),食塩添加濃度(1.4 %)を減塩した区(L),醤油6 %添加で食塩添加濃度(1.4 %)を減塩した区(S1.4),S1.4の生地を最適短時間焼成した区(S1.4 S)の4種の生地からパンを製造し,詳細な生地の製パン性とパン品質の評価を行った.
その結果,S1.4とS1.4 Sの生地のGPは発酵3時間でCとLに比べ高くなったが,そのGRDは有意に低く,また,SLVは低い値(S1.4 Sでは有意)を示した.S1.4とS1.4 Sのパンのボリュームとその外観の色相はCとLに比べそれぞれ小さく,劣っていた.しかし,S1.4 Sの外観の色相はCにかなり近い値を示した.また,クラムの色相もCとLに比べS1.4とS1.4 Sでは有意に劣っていた.その主な理由は,醤油の添加に伴いパンのクラムが薄い褐色を示したためであった.S1.4とS1.4 Sのパンは,CとLに比べ速い老化と低い凝集性を示した.しかし,S1.4 Sのパンは,他のパンに比べ高い水分含量を示し,S1.4に比べその老化はかなり抑制された.4種のパン間で各種糖類含量に大きな差異はなかったが,CとLに比べS1.4とS1.4 Sでは,その総遊離アミノ酸含量は有意に非常に高い値を示した.また,食品塩分計による食塩濃度の測定結果から,Cと比べその他の3種のパンの食塩濃度は添加食塩量と一致する約70 %の値を示した.4種のパンの官能評価から,S1.4とS1.4 Sのパンは,Cに比べ総合的外観,クラム評価はやや劣るが,S1.4 Sでは外観の色相とクラムの形状と色相がかなり改善された.塩味はCと同等の評価であり,旨みは有意に高い値であった.これらの結果から,パンの減塩のため食塩の代替として適当量の醤油を添加し,超強力粉を用いて製パン性を向上させ,主にクラストの色相を改善するために最適短時間焼成で製パンを行うことによって,パンの品質を大きく低下させることなく,減塩パンを開発することが可能であることが示唆された.
The primary physicochemical aspects of freezing are the substantial reduction of water activity and the increase of osmotic pressure by freeze-induced concentration. The temperature-dependent ice fraction subsequently affects the changes in thermal properties and specific chemical reaction processes. In frozen food, the ice structure is strongly determined by the moving ice-front through the balance of water mass transfer and heat transfer. By controlling the ice structure, progressive freeze-concentration could be applied to concentrate liquid food with high quality. In some living organisms, freeze-related biosubstances are produced and accumulated for freeze-tolerance. The cell structure also plays an important role in the freeze-tolerance of cells in microorganisms, plants, and animals.