日本食品科学工学会誌
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近赤外分光法によるウンシュウミカン果汁の糖および酸含量の測定
近赤外分光法による果汁成分の測定(第1報)
藤原 孝之本庄 達之助
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1995 年 42 巻 2 号 p. 109-117

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抄録

近赤外法による,ウンシュウミカン果汁の全糖含量,Brix値および酸含量の測定精度並びに検量線の採用波長の帰属について検討した.
原スペクトルおよび2次微分スペクトルと,従来法による分析値に基づき重回帰分析を行い精度を比較したところ,後者の方が良い結果を示した.全糖含量およびBrix値については2波長,酸含量については4波長のdd2log(1/T)値からなる良好な検量線が得られた.これらの検量線のSEPは全糖含量が0.09% (w/v), Brix値が0.08°Brix,酸含量が0.047% (w/v)であった.このことにより,ウンシュウミカンの3成分を実用的な精度で同時測定できるものと考えられた.
糖類およびクエン酸の水溶液のスペクトル測定により,dd2log(1/T)値に基づく検量線の帰属を以下のように考察した.全糖含量の検量線に採用された2272nm等いくつかの波長は,ショ糖,果糖およびブドウ糖に由来するものと考えられた.酸含量の検量線の採用波長のうち1718nmおよび2292nmは,クエン酸の吸収帯にあるとともに,糖含量の違いによるdd2log(1/T)値の変動が小さい波長であると考えられた.Brix値の検量線に採用された1742nmは,Brix値が等しい場合には,糖およびクエン酸の組成が異なってもdd2log(1/T)値の変動が小さいことが明らかとなった.果汁のBrix値は全糖含量および酸含量の和と高い相関が認められたため,1742nm付近は,糖および酸の組成が異なる試料に対して,Brix値の測定に適する波長であると考えられた.

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