日本食品科学工学会誌
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高圧処理を用いたすり身とマイワシ脂質の組織化
川崎 賢一舩津 保浩伊藤 裕佳子
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1996 年 43 巻 2 号 p. 146-156

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抄録
健康性機能に富むマイワシ脂質とすり身の混合物を高圧処理により組織化することを目的として,高圧処理条件,脂質を添加したゲルの物性,および肉糊中の脂質の性状変化などについて検討した結果,以下のことが明らかになった.
(1) マイワシの脂質を0, 5, 10, 15, 20%添加した肉糊(タンパク質濃度が130mg/g)を300MPaの条件で高圧処理すると添加する脂質の量が5%までは無添加のゲルに比べ,破断強度と破断凹みの値は同じであったが,10, 15, 20%添加したゲルのそれらの値は添加した脂質量が多いほど小さい値を示した.
(2) 肉糊のタンパク質濃度が70mg/gのとき20%の脂質を添加した加圧-加熱ゲルの破断強度と破断凹みの値は無添加のゲルのそれらの値よりもわずかに小さかった.
(3) 肉糊のタンパク質濃度が高いほど,ゲル中には少量の脂質しか含有できないが,逆に低いと多量の脂質を含有できた.
(4) 添加したマイワシ脂質(α-Toc含有)の酸化は加圧ゲルや加圧-加熱ゲルの調製中にわずかに進行した.
(5) タンパク質濃度130mg/gの肉糊にマイワシ脂質を5%添加した加圧-加熱ゲル中のDHA量は208mg/100g, EPA量は336mg/100gと強靱なゲル物性を示す健康性機能に富む食品素材が調製できた.
(6) タンパク質濃度70mg/gの肉糊にマイワシ脂質を15%添加した加圧-加熱ゲル中のDHA, EPAの量はそれぞれ557mg/100g, 979mg/100gと高く,柔軟なゲル物性を示す健康性機能に富む食品素材となり得ることが分かった.
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