1996 年 43 巻 5 号 p. 502-509
本報告を次のように要約した.
(1) 各種水素貯蔵合金のうち,LaNi5系合金が油脂の水添反応を生起した.これは,LaNi5系合金が六方晶型の結晶構造であることに起因するものと考えられる.
(2) 反応系に添加した通常水添用のニッケル触媒は,水素貯蔵合金による水添反応を加速した.
(3) 水素の吸蔵と排出の繰り返しにより成される微粉化処理は,合金表面の反応活性点の増加および油脂との接触頻度の増大をもたらし,水素貯蔵合金の触媒効果を高めた.
(4) 水素貯蔵合金は,油脂中でも一般的な水添度の水添反応を行うのに充分な水素量を再吸蔵することが可能であり,また,繰り返し使用することもできる.
(5) 水素貯蔵合金LaNi4.0 Al1.0を用いた油脂の水添では非選択的な反応が進行し,トランス型脂肪酸含量が少なく,温度依存性の小さい物性を備えた水添油脂を生成することができる.