日本食品科学工学会誌
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豆類太もやしの植物ホルモン溶液浸漬処理栽培による品質と生産量への影響
田尻 尚士
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1996 年 43 巻 7 号 p. 849-857

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抄録

豆類太もやしの栽培法として,ダイズ,リョクトウを用いて胚軸部が短く太く,根部が短く根毛の少ない良質の太もやしで水分含有量と生産性に富み,表面色調が透明感と艶を有することを目的に,植物ホルモン(オーキシン;Indole-3-Acetic Acid: IAA,アブシジン酸;Abscisic Acid: ABA,サイトカイニンBenzyl Ade-nine: BA,ジベレリン;Gibberellin: GA1) 10.0ppm溶液浸漬処理栽培法を試み,生長度,水分含水量と生産量,食品物性度および色調より有効適性値を検討した.
原料豆を5時間浸漬(25~27℃)して発芽促進を行い,発芽床(27~39℃)内で6時間毎に散水(27±2℃)を行い,24時間処理後に栽培床(27~30℃)に置床し,毎日6時間毎の散水と通気を行い7日間栽培した.
本法でのダイズ,リョクトウ両太もやしの生長は,各ホルモン溶液浸漬処理下では類似した傾向を示した.
IAA, BA処理栽培では市場適性値を基準とする比較では,収穫適期と判断される栽培5日での胚軸部の伸長,根部伸長と根毛発生数は抑制され,胚軸部の肥大,食品物性度は強化促進され,色調は肉眼的観察下で市場適性度を満たし,品質面で総合的に有効で適性を示し,高品質の豆類太もやしの栽培が可能となった.
一方,GA1, ABAでは胚軸部の伸長過度や根毛多発および食品物性度の低下など不適格となった.
経済面で重要となる生産量と水分含有量では,ABAが適性を有し,IAA, BAは生産量,水分含有量ともに低下し,経済的要素より判断して不適格となった.GA1は両者の中間的様相を示すが適性度は認められなかった.
豆類太もやしのホルモン溶液浸漬処理栽培法は,生産量の強化や水分含有量の増加促進策としては不十分であり,ホルモン溶液浸漬処理の単独および併用処理や溶液濃度,処理時期と期間などの栽培条件の再考など幾多の課題が残されたことより更なる検討が必要である.
一方,胚軸部と根部の生長抑制や食品物性度の強化法としての品質改良策としては,IAA, BA溶液浸漬処理は有効で適性を有した.

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