日本食品科学工学会誌
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乾海苔の5'イノシン酸とその酵素的生成
荒木 繁桜井 武麿泉野 友香高橋 幸資
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1996 年 43 巻 8 号 p. 956-961

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抄録

乾海苔の5'イノシン酸(5'IMP)の含量を調べるため,試料を80%エタノールで抽出した場合と,それに先立って数分間温水に浸漬して水戻しを行ったのちエタノール抽出をした場合とを比較した.その結果,前者では5'アデニル酸(5'AMP)と5'グアニル酸(5'GMP)は検出されたが,5'IMPは認められなかった.これに対して,後者では5'AMPと5'GMPとともに5'IMPが検出された.このことから,5,IMPの生成には試料を水に浸漬することが必須であることが示唆された.そこで5'IMPの生成と試料の浸漬時間および水温との関係を調べた結果,5'IMPの生成量は,乾海苔では180秒,焼海苔では120秒の浸漬時間で飽和に達し,30-40℃の水温で最高値を示した.これらの実験において,5'IMPの生成にともなって5'AMPの低下がみられた.しかも,75℃では5'IMPの生成はみられなかった.
これらの事実は,乾海苔に5'AMPデアミナーゼが存在し,水に浸漬したとき,この酵素が5'AMPに作用して急激に5'IMPが生成されることを示唆している.このことは,さらに乾海苔の5'IMPは,それを口に含んで咀嚼している間に生成することを示唆している.

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