[背景]統合失調症では、陰性症状、認知機能障害、薬剤性副作⽤、⽣活機能低下、⾝体疾患リスクが重なり、⾷⾏動の偏りや消化管症状が⾒逃されやすい。便秘、腹部膨満、⾷欲低下、慢性下痢、胃もたれなどは、患者本⼈から⾃発的に訴えられにくく、鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンD の不⾜または利⽤低下として臨床上問題化することがある。
[⽬的]本稿では、統合失調症診療において⾒逃されやすい消化吸収障害を、鉄、亜鉛、マグネシウム、ビタミンD の評価を中⼼に整理し、精神科外来で使⽤可能な問診、検査、解釈、介⼊⼿順と、多職種で⽀える栄養・消化管ケアの考え⽅を提⽰する。
[内容]鉄⽋乏は疲労、集中困難、易刺激性などと臨床的に重なりうるが、フェリチンは炎症の影響を受けるため、⾎算、MCV、⾎清鉄、TIBC、TSAT、CRPと合わせて解釈する必要がある。亜鉛は味覚、⾷欲、⽪膚症状、創傷治癒と関連するが、⾎清亜鉛のみで体内状態を断定することはできない。マグネシウムは神経筋機能、電解質、便通、薬剤相互作⽤の観点から重要であるが、統合失調症症状への直接効果については確⽴した根拠が乏しい。ビタミンDは⾻、筋⼒、⽇光曝露、⾝体活動、代謝リスクの観点から評価する意義があるが、補充による精神症状改善効果は⼀貫していない。
[結論]統合失調症患者における疲労、意欲低下、認知機能低下、⾝体活動低下、⾝体不調は、精神症状、薬剤性副作⽤、⽣活機能低下のみならず、消化吸収障害や栄養⽋乏によって修飾されている可能性がある。精神科臨床では、⾷事内容、便通、消化器症状、服薬、⾝体疾患、⾎液検査を組み合わせて評価し、医師、看護師・訪問看護、薬剤師、管理栄養⼠、精神保健福祉⼠などが役割を分担し、必要に応じて内科・消化器内科と連携する多職種アプローチが望ましい。便通や腸内環境への配慮を含む多職種の⾷事⽀援は、標準治療を補完する補助的⽀援となりうる。