抄録
分子あるいは高分子を高度に組織化させながら, 刺激に大きく応答する系を実現することは, これまであまり意識されてこなかった。しかし, 生体組織と高度な機能に着目すればその重要性は明らかである。本稿は筆者らの動的な高分子組織膜に関する最近の研究を概観する。ナノスケールのアゾベンゼン系光応答性単分子膜を出発点として, 単分子膜から他のメソスケールの高分子薄膜への光情報転写, さらには光照射にてミクロスケールに及ぶ長距離物質移動が誘起される系を紹介する。いずれもアゾベンゼン部位を並べることが重要であり, この分子組織化によって分子の反応ベクトルを散逸させずに大きな効果に導くことができる。