抄録
筆者らは数年前, ジビニルシランとジアミン化合物からアニオン重付加反応により, 有機ケイ素とアミノ基を主鎖に有するポリサイラミン誘導体が合成されることを見いだした。疎水性の有機ケイ素セグメントと親水性のアミノ基セグメントを交互に有するポリサイラミンは水中においてそのアミノ基のプロトン化に伴いユニークな相転移挙動を示す。i) pH及び温度によってその溶解性を著しく変化させる2重応答材料である。ii) ケイ素のルイス酸性のため, 種々のアニオンが強く配位する。iii) アミノ基のプロトン化と有機ケイ素のアニオンバインドのため, 主鎖の運動性が著しく変化するゴム弾性転移を示す。実際, ポリサイラミンのガラス転移点は脱プロトン化状態で一85℃の極めて柔らかいゴム状態を示すのに対し, プロトン化状態では+80℃以上のポリスチレンのようなプラスティック状態となる。このような一分子における極めて大きな相転移を集合状態でシンクロナイズさせることによって様々な新規信号応答性材料が創出される。本稿ではポリサイラミンの合成, 水溶液中での特性及び表面ポリマーブラシへの展開をまとめる。