抄録
植物から得られる油には, 不揮発性の油脂と揮発性の精油がある。筆者はとくに精油を取り上げ, その主な構成分子であるテルペノイドのヒト代謝に関与するCytochrome P450分子種の決定から精油構成分子が示す特有の代謝様式を明らかにしてきた。また, アセチルコリンエステラーゼ阻害活性, 高選択的シクロオキシゲナーゼ2阻害活性およびDNA変異抑制作用などの現代病発症の予防と治療に関わる多種の生体内機能性を見出した。さらに, この研究を支えた各種生体触媒による精油構成分子の変換によるヒト体内動態物質の量産化の研究では, 多数の天然型新規物質を産生し, 種差間特異的反応の解明など生体触媒反応の有効性と精油構成分子の香気特性解明研究の技術的基盤を提示した。