オレオサイエンス
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特集総説論文
添加剤により誘起される巨大単層膜ベシクルの形成メカニズム
山田 悟史菱田 真史
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2011 年 11 巻 6 号 p. 205-211

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抄録

リン脂質は生体膜の主要な構成成分の1つで, リン脂質水溶液中で形成される1-10μm程度の直径を有する単層膜ベシクル (giant unilamellar vesicle; GUV) は実際の生体膜のモデル系として精力的に研究されている。ただし, 通常リン脂質は生体膜のモデル系としてあまり適当ではない多層膜のべシクルを形成することが多い。最近の研究で, あらかじめ糖や塩を添加しておいたリン脂質乾燥薄膜を水和することにより, GUVが劇的に効率よく形成されることが明らかになった。これは容易に生体膜のモデル系を構築できる画期的な方法だが, その形成メカニズムは明らかになっていない。本研究では, 中性子反射率, X線小角散乱, そして位相差顕微鏡を組み合わせた実験を行い, ベシクル形成時における添加剤による強い浸透圧が薄膜内部における脂質二重膜の積層周期の発散を引き起こすことによってGUVの形成が促進されることを明らかにした

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© 2011 公益社団法人 日本油化学会
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