2014 年 14 巻 11 号 p. 465-472
バイオサーファクタント(BS)とは,酵母や細菌などの微生物によって,様々な再生可能資源から量産される界面活性物質である。通常の合成界面活性剤に較べて,優れた界面活性を示すことに加えて,高い生分解生や様々な生理活性を示すことから近年注目されている。BSのうち,糖脂質型のものは,生産面でも機能面でも利点があるため,我々は,マンノシルエリスリトールリピッド(MEL),ソホロリピッド(SL),セロビオースリピッド(CL)などの糖脂質型BSについて着目した。各種スクリーニング技術の進展により,様々な親水- 疎水バランスを持つMEL が見出されており,ある種のMELが保湿効果やダメージヘア改善などの機能を示すことが分かった。また,食糧と競合しない非可食バイオマスの一種であるジャトロファ油やマフア油などから,高収率で,SLを量産することに成功した。さらに,BSの新たな用途展開として,SLが各種の溶媒中で,ファイバー状の三次元の超分子構造を構築することにより,低分子ゲル化剤として機能することも見出した。これらのBSのユニークな特徴は,BSの用途の拡張や,新しい応用へと発展するものと考えられる。本稿では,糖脂質型のBSに注目し,特にその生産と機能利用について概説した。