オレオサイエンス
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特集総説論文
超臨界流体抽出分離技術を用いたリピドーム解析手法の開発
和泉 自泰福崎 英一郎馬場 健史
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2014 年 14 巻 8 号 p. 329-336

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抄録

脂質は幅広い化学的性質、類似構造を有する多様な生体分子であり,それぞれが様々な生理機能を担っている。このような脂質分子を包括的かつ定量的に観測する学問であるリピドミクスは,近年,医学・創薬・食品・バイオテクノロジーなどの幅広い研究分野で精力的に使用されている。超臨界流体(SCF) は,臨界温度,臨界圧力を超えた状態の物質であり,低粘性,高拡散性というクロマトグラフィーの移動相や生体試料からの抽出媒体として好ましい性質を有している。超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)は,高流速分析においても高い分離能を保ち,極性溶媒(モディファイアー)の添加や温度,背圧を変化させることでGCやLCにない代謝物の幅広い分離モードを選択できる。また,超臨界抽出(SFE)は,溶解度の差を利用して抽出操作を行う手法であり,一般的な有機溶媒抽出法と比べて,高い抽出効率,暗黒,無酸素下でのマイルドな条件での抽出が可能であり低環境負荷などの利点がある。本稿では,超臨界流体抽出分離技術を用いたリピドーム解析手法に焦点を当て,その開発状況と今後の課題や可能性について概説する。

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© 2014 公益社団法人 日本油化学会
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