2016 年 16 巻 8 号 p. 371-379
香気をもつ有機化合物の中には,構造中に不斉中心を有するキラル化合物が数多く存在する。これまでにキラル化合物のエナンチオマー間で香質およびにおい閾値の面で差異が見られることが多数報告されており,香料のキラルサイエンスは1つの研究分野として認識されている。本総説ではキラルな香料化合物の紹介やそれらの研究を進めるにおいて利用される技術である超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)を用いたラセミ体の光学分割,および最近発展してきた赤外円二色性(VCD)を用いた絶対立体配置の決定事例について紹介する。