2017 年 17 巻 10 号 p. 475-481
フラボノイドはポリフェノールの主要なグループである。コホート研究の結果は,フラボノイドのうち,ケルセチン等のフラボノールの摂取が心血管疾患のリスクを下げることを示唆している。日本において,タマネギはケルセチンの主な摂取源であり,北海道の地域住民を対象とした調査では,ケルセチンの推定摂取量は,一日当たりケルセチンアグリコンとして15-16 mgであった。農研機構では,平成28年にケルセチンを可食部100 g当たりアグリコンとして75 mg含む,ケルセチン高含有タマネギ「クエルゴールド」を品種登録した。「クエルゴールド」を摂取することによりケルセチンの摂取量を増やすことができる。 認知機能の低下や認知症の発症と食生活との関係が明らかになりつつあるが,ケルセチンは加齢マウスやアルツハイマー病モデルマウスの認知機能を改善することが明らかになった。介入試験の結果は,ケルセチン高含有タマネギの摂取が早期アルツハイマー病患者の想起記憶を改善することや,高齢者の認知機能を改善し,認知機能低下を抑えることを示唆しており,ケルセチン高含有タマネギが,食生活を介して認知機能の低下や生活習慣病予防に寄与することが期待される。