オレオサイエンス
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17 巻, 10 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
特集総説論文
  • 山下 陽子, 芦田 均
    2017 年 17 巻 10 号 p. 467-474
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    カカオはカテキンやそれが重合したプロシアニジン類などのポリフェノールを多く含み,生活習慣病などのさまざまな疾病の予防効果が期待されている。本稿では,カカオポリフェノールによるAMP活性化キナーゼ(AMPK)のリン酸化とインクレチンホルモンの分泌によるグルコース輸送担体4型の細胞膜移行を介した高血糖予防効果とAMPKのリン酸化によるエネルギー産生を向上させ脂肪蓄積予防効果について,わたしたちの知見を中心に紹介する。

  • 小堀 真珠子
    2017 年 17 巻 10 号 p. 475-481
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    フラボノイドはポリフェノールの主要なグループである。コホート研究の結果は,フラボノイドのうち,ケルセチン等のフラボノールの摂取が心血管疾患のリスクを下げることを示唆している。日本において,タマネギはケルセチンの主な摂取源であり,北海道の地域住民を対象とした調査では,ケルセチンの推定摂取量は,一日当たりケルセチンアグリコンとして15-16 mgであった。農研機構では,平成28年にケルセチンを可食部100 g当たりアグリコンとして75 mg含む,ケルセチン高含有タマネギ「クエルゴールド」を品種登録した。「クエルゴールド」を摂取することによりケルセチンの摂取量を増やすことができる。 認知機能の低下や認知症の発症と食生活との関係が明らかになりつつあるが,ケルセチンは加齢マウスやアルツハイマー病モデルマウスの認知機能を改善することが明らかになった。介入試験の結果は,ケルセチン高含有タマネギの摂取が早期アルツハイマー病患者の想起記憶を改善することや,高齢者の認知機能を改善し,認知機能低下を抑えることを示唆しており,ケルセチン高含有タマネギが,食生活を介して認知機能の低下や生活習慣病予防に寄与することが期待される。

  • 河合 慶親, 石坂 朱里
    2017 年 17 巻 10 号 p. 483-487
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    食事由来フラボノイドのもつ生理活性がヒトの健康に与える効果について古くから注目されてきた。フラボノイドや他のポリフェノールは吸収後に第二相解毒代謝抱合体,すなわちグルクロン酸抱合体や硫酸抱合体へと代謝されて体内に存在するが,これらの抱合体がどのようにヒトの健康に有益な活性を示すかについては,標的部位や標的分子を含めて明らかにされていなかった。本稿では,ヒト血漿中に見出される主要なケルセチン代謝物であるケルセチン-3-グルクロニドのマクロファージへの特異的な蓄積とこれに引き続いて生じるアグリコンへの脱抱合の分子機構に関する筆者らの近年の知見について解説する。フラボノイド抱合体が特定の臓器や細胞において機能性を発揮する仕組みを理解することは,日常の食事において天然フラボノイドの生理活性をより効果的に活用するための新たな戦略を構築するうえで有用な情報を提供するであろう。

  • 藤村 由紀, 三浦 大典, 立花 宏文
    2017 年 17 巻 10 号 p. 489-495
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    低分子生理活性化合物の生物学的・薬理的作用の解明には,生体内における高解像度の空間分布の理解が必要不可欠であるが,現状では,動物組織レベルで標識化されることなく本来の形状で分子局在を検出できる分析技術は報告されていない。本総説では,ポリフェノールのような低分子生理活性化合物をラベルフリーで可視化できる新たなin situイメージング技術について紹介する。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析イメージング技術(MALDI-MSI)は,緑茶中の主要な生理活性ポリフェノールであるエピガロカテキンガレート(EGCG)の経口摂取後のマウス組織微小領域における分布を可視化し,さらに,本技術と標品非依存的代謝物同定法との組合せは,EGCGとその第II相代謝物群の同時画像化を可能とした。 このようなアプローチは,既存の分子イメージング法の欠点を克服するとともに,新たな生物学的発見に寄与することが期待される。

  • 隈元 拓馬, 久永 絢美, 侯 德興
    2017 年 17 巻 10 号 p. 497-505
    発行日: 2017年
    公開日: 2019/08/05
    ジャーナル フリー

    ポリフェノールは,多くの植物性食品に存在し,様々な健康維持機能を持つ化合物である。これまで,ポリフェノールの機能性発現は,主にその抗酸化機能によるものだと考えられてきた。しかし,ポリフェノールはインビトロで強い抗酸化機能を示すが,生体内での濃度は極めて低く,抗酸化剤としての働きが限定的である。近年,一部のポリフェノールまたはその代謝産物は,生体機能を制御する細胞内信号伝達系にある重要なプロテインキナーゼ活性を修飾していることが多く報告されている。その中の一部は,これらのプロテインキナーゼと直接結合し,そのリン酸化状態に影響し,下流の細胞信号伝達経路および遺伝子発現を制御することで多彩な機能発現に寄与している。本総説は,ポリフェノールの機能発現における標的分子同定のアプローチ及び最近の進展について,我々の研究グループの結果を踏まえながらまとめたものである。

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