2017 年 17 巻 10 号 p. 497-505
ポリフェノールは,多くの植物性食品に存在し,様々な健康維持機能を持つ化合物である。これまで,ポリフェノールの機能性発現は,主にその抗酸化機能によるものだと考えられてきた。しかし,ポリフェノールはインビトロで強い抗酸化機能を示すが,生体内での濃度は極めて低く,抗酸化剤としての働きが限定的である。近年,一部のポリフェノールまたはその代謝産物は,生体機能を制御する細胞内信号伝達系にある重要なプロテインキナーゼ活性を修飾していることが多く報告されている。その中の一部は,これらのプロテインキナーゼと直接結合し,そのリン酸化状態に影響し,下流の細胞信号伝達経路および遺伝子発現を制御することで多彩な機能発現に寄与している。本総説は,ポリフェノールの機能発現における標的分子同定のアプローチ及び最近の進展について,我々の研究グループの結果を踏まえながらまとめたものである。