2017 年 17 巻 10 号 p. 489-495
低分子生理活性化合物の生物学的・薬理的作用の解明には,生体内における高解像度の空間分布の理解が必要不可欠であるが,現状では,動物組織レベルで標識化されることなく本来の形状で分子局在を検出できる分析技術は報告されていない。本総説では,ポリフェノールのような低分子生理活性化合物をラベルフリーで可視化できる新たなin situイメージング技術について紹介する。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析イメージング技術(MALDI-MSI)は,緑茶中の主要な生理活性ポリフェノールであるエピガロカテキンガレート(EGCG)の経口摂取後のマウス組織微小領域における分布を可視化し,さらに,本技術と標品非依存的代謝物同定法との組合せは,EGCGとその第II相代謝物群の同時画像化を可能とした。 このようなアプローチは,既存の分子イメージング法の欠点を克服するとともに,新たな生物学的発見に寄与することが期待される。